紋章が語るヨーロッパ史
浜本 隆志
白水Uブックス
定価: -¥ 950+税
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#歴史
ヨーロッパの歴史を語るうえで欠かせないものに紋章がある。この紋章は騎士が戦場で敵味方を識別する際、楯に紋様を描いたことに由来する。紋章と紋章から影響を受けた旗という二つのシンボル標章を軸に、多数の図版を通してヨーロッパの歴史と社会、時代精神などを解明する。
序章 生きている紋章
第1章 紋章の起源と略史
第2章 紋章学入門
第3章 主要シンボル・モティーフの
由来と変遷
第4章 紋章と旗のヨーロッパ史
第5章 共同体とシンボル標章
第6章 差別とシンボル
終章 タテ社会とヨコ社会の
シンボル標章
”………。
このような事実は、娼婦のルーツが古代のギリシア・ローマ時代においては、神殿の巫女であったり、「聖なる娼婦」であったことを物語っている。彼女たちは神に仕え、「病気を治癒する者として崇められていた」。古代において、性は繁栄と豊穣をもたらすものとして肯定され、さらに乱交すら容認されていたけれども、キリスト教の禁欲的な世界観がヨーロッパを席巻してからは、売春は悪とされ、彼女たちは罪あるものとして、しるしによって差別されたのである。”
〈第6章 差別とシンボル より〉
ヨーロッパの紋章の起源は、戦場で敵味方が判別できるように、盾に図案を描いたことが発祥の由来といわれれています。
また別の目的――差別の目印として――
おもに社会の下層階級の人々に対する
社会的制裁のためのシンボルとして、考えだされています。(第6章「差別とシンボル」)
デザインの変遷を概観すると、ルネサンス以前は、実戦での実用本位でしたが、ルネサンス以降は装飾に凝るようになり、バロック、マニエリスムの時代を経過後、19世紀になるとまたシンプルな復古調に回帰します。
西洋の紋章と日本の家紋はよく比較されますが、西洋の紋章は細かい決まりごとに基づいて、多種多様な要素を複雑に構成したデザインが目につきます。一方、日本の家紋は左右対称でシンプル、スッキリしたデザインです。一目瞭然、和洋の美学の違いがここに表れています。
美品